ここでは、介護保険と生活保護の関係について記述していきます。
多くの方に起こる疑問の中で特に多いもののひとつが、「介護保険と生活保護の関係性」だと思います。
「生活保護受給者は介護保険料を納めなくてはいけないの?」
「そもそも生活保護受給者は介護保険被保険者になれるの?」
といった疑問はよく聞くところです。
ここでは、生活保護法における「介護扶助」を説明した上で、介護保険との併用をみて行きたいと思います。
・生活保護法における介護扶助
生活保護を受けると、8種の扶助を受けることができます。
「生活扶助」・「教育扶助」・「住宅扶助」・「医療扶助」・「介護扶助」・「出産扶助」・「生業扶助」・「葬祭扶助」の8種です。
ここで特に問題となるのが「介護扶助」の部分です。
・介護扶助の種類
生活保護法により8つに分類され、その扶助を受けることができます。
生活保護法に規定されているサービスも列挙しておきます。
1.居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行うものに限る。)
訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所介護・通所リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護・特定施設入居者生活介護・福祉用具貸与・夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護・小規模多機能型居宅介護・認知症対応型共同生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護またはそれらに相当するサービス
2.福祉用具
3.住宅改修
4.施設介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護・介護福祉施設サービス・介護保健施設サービス・介護療養施設サービス
5. 介護予防(介護予防支援計画に基づき行うものに限る。)
この項は、1.の居宅介護のサービス内容が「介護予防」に置き換わっただけです。具体的なサービス対象は基本的に上記1.の内容と同じです。
6.介護予防福祉用具
7.介護予防住宅改修
8.移送
上記8種類の具体的事項は介護保険法第8条に定義されているものであり、介護保険で用いられる用語と同じものとして捉えても差し支えありません。
※居宅介護支援計画書…ケアマネージャーに作成してもらう「ケアプラン」のことです。
・生活保護受給者に対する介護保険法の適用
1.被保険者
満65歳以上の方は生活保護受給の有無に関わらず、介護保険第1号被保険者となります。
また、満40歳~64歳までの方の場合、納める保険料は医療保険から納めることになります。よって医療保険に加入していない方は、介護保険の第2号被保険者とはなりません。(医療保険に加入している場合は、第2号被保険者となります。)
2.保険料の支払い
一.満65歳以上の方(第一号被保険者)
a.年金の月額が15000円以上の方は年金から保険金が控除されます。
b.年金の月額が15000円未満の方は市町村に保険料を直接支払います。支払った金額は生活扶助に加算されて支給を受けます。(実質の負担は0円)
※ただし、この場合は福祉事務所の代理納付がほとんどになります。
二.満40歳~64歳のかたで医療保険に加入している方(第二号被保険者)
勤労収入から保険料額が控除されます。
三.満40歳~64歳のかたで医療保険に加入していない方
介護保険被保険者ではないので保険料そのものを支払う必要がありません。
3.利用者負担
一.被保険者である場合
まず、費用の9割は介護保険により補助されます。残り1割の自己負担部分について生活保護法の介護扶助による支給を受けることになります。
二.被保険者でない場合
費用の10割(費用全額)が介護扶助として支給されます。
4.介護扶助の方法
基本的に「現物支給」となります。(生活保護法第三十四条の二)ただし、現物給付が困難である場合や現物給付自体が適さない場合については「金銭給付」となります。
5.介護扶助のサービス水準
基本的に介護扶助の介護方針・介護報酬は、介護保険に則して行われます。従って、原則として介護保険と同じ範囲水準の介護サービスが提供されることになります。